総合型地域スポーツクラブが注目され始めたわけ

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Jリーグ誕生前の日本のプロスポーツの実態


総合型地域スポーツクラブってなに?」でも申し上げたように、これまでの日本は、地域で行なうスポーツは単一種目・単一世代の関わりが主流となっていました。そのため、メンバーの固定化や新規加入者が少なく高齢化するなど、地域住民が気軽にスポーツ活動を楽しめる環境でないのが現状でした。

一昔前まで、日本のプロスポーツの代表と言えば「プロ野球」であり、球団は企業の広告塔としてその存在意義を持ち、“企業主導型”のモデル「企業スポーツ」が日本のプロスポーツとして行われてきました。

プロ野球のビジネスモデルは、企業が自社の広告宣伝の一環としてクラブを支援するいわゆるスポンサービジネスといっても過言ではありません。だからこそ、プロ野球の球団名には企業名がクラブ名とされていることが多く、実際のところ、日本のトップスポーツは、企業などの親会社が全面的に支援しなければ成り立たないリーグモデルでした。

Jリーグの誕生と地域主導型スポーツへ


そんな中、1993年に日本初のプロサッカーリーグ「Jリーグ」がスタートし、日本のプロスポーツのモデルが少しずつ変わっていきました。

Jリーグ加盟チームには、地域の名称をつけることを義務づけ、地域に根ざしたクラブづくりを推奨しました。また、Jリーグはスポーツを通じた社会貢献活動にも力を入れ、クラブにはホームタウンの導入、下部組織の確立など、地域との関係を深める取組を推進しました。

理念としては「Jリーグ百年構想〜スポーツで、もっと、幸せな国へ。〜」を掲げ、スポーツを通じて世代を超えたコミュニケーションの輪を広げていくために、“地域に根ざしたスポーツクラブ”を核とした様々なスポーツ文化の振興活動に取り組むこととしました(百年構想(Jリーグ公式サイト)より)。

そのため、Jリーグの誕生は、日本スポーツ界が従来の“企業主導型”から地域主導型”のビジネスモデルへとその方向性を見直す一つのきっかけとなりました。

制度改正で注目され始めた「総合型地域スポーツクラブ」


Jリーグの誕生と成長により、日本スポーツの視点が少しずつ地域に向けられてきました。平成23年には「スポーツ振興法」を50年ぶりに全面改正する「スポーツ基本法」が成立し、それに伴い、平成24年には「スポーツ基本計画」が策定されました。

「スポーツ基本法」や「スポーツ基本計画」では、文部科学大臣がスポーツに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、スポーツの推進に関する基本的な10年間の計画を定め、「スポーツは世界共通の人類の文化」「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」と明記しました。

つまり、スポーツは任意で行なうものでなく、国民の権利として定められたのです。そのため、スポーツ振興に関する法規・施策(教育基本法、社会教育法、スポーツ振興投票法:toto)などについても目を向けられ始め、今後は教育現場と地域スポーツクラブの関わりなども深めていく必要があるとされました。

そして、国として運動習慣者の増加を提言し、地域におけるスポーツ・身体活動・運動・健康づくり・地域づくりを総合型地域スポーツクラブに期待しました。

終わりに


こうして総合型地域スポーツクラブは、注目され始めました。しかし、実際のところ、総合型地域スポーツクラブの注目度は、まだまだ低く、一般市民には認知されていないのが現状です。地域住民が協力し合い、支えていく総合型地域スポーツクラブであるのに、中心となる人たちの認知度が低ければ、クラブは成長しません。

誰かが伝え続け、必要性を理解してもらえるように努力しなければ、日本のスポーツ事情、地域の課題は改善されていきません。安定を求め変わるまで待つのではなく、勇気を出して自分が中心となり、日本の未来を良い方向に変えるんだ、という気持ちを持って動くことが必要だと思います。

そんな若者を自分の活動により増やしていけるように、そして総合型地域スポーツクラブを知ってもらえるように、これからも自分なりの伝え方で頑張っていきたいと思います。


■参照資料

・谷塚哲「地域スポーツクラブのマネジメント」
・谷塚哲「地域スポーツクラブの“法人格”取得しよう!」
・公益財団法人日本体育協会編集発行「公認アシスタントマネジャー養成テキスト」

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